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認知症をふせぐ5つの生活習慣|研究データで解説

14分で読めますゆとり暮らし編集部
公園をウォーキングするシニア夫婦
この記事の要点
  • 認知症のリスクを下げるために今日からとり入れられる5つの生活習慣を、ランセット委員会やWHOなどの研究データをもとにわかりやすくまとめました。運動・食事・すいみん・人とのつながり・聴力ケアの5本柱で、ムリなく続けられる具体的な方法をご紹介します。
この記事では公的制度に関する情報を含みます。制度の内容は記事執筆時点のものです。最新情報は各窓口または公式サイトでご確認ください。

「認知症の4割はふせげる」という研究があります

認知症は年をとれば誰にでも起こりうるものですが、近年の研究で生活習慣を見なおすことでリスクを大きく下げられることがわかってきました。

イギリスの医学誌ランセットが2024年に発表した報告書では、認知症の原因のうちおよそ45%はふせげる可能性があるとされています(Lancet Commission, 2024)。ランセット委員会は14の「変えられるリスク要因」を特定しました。運動不足や高血圧、社会的な孤立、聴力の低下など、日々の暮らしのなかで対処できるものばかりです。

ランセット委員会の14のリスク要因(2024年)

若いころ: 学歴。中年期(45〜65歳): 難聴、頭のけが、高血圧、お酒のとりすぎ、肥満。高齢期(65歳以上): 喫煙、うつ、社会的孤立、運動不足、大気おせん、糖尿病、視力の低下、悪玉コレステロール(LDL)の高値。2020年の報告から視力低下とLDLコレステロールが追加されました。

この記事では、認知症予防のために今日から始められる5つの習慣を、研究データにもとづいてご紹介します。ひとつでも気になるものがあれば、ぜひ取り入れてみてください。

緑のなかを歩くシニア女性
ウォーキングは認知症予防の第一歩。外の空気を吸いながら歩くだけで効果があります

1. 体を動かす――まずは「1日3,800歩」から

体を動かす習慣のある人は、認知症のリスクが低いことが多くの研究でしめされています。

2022年のJAMA Neurology誌にイギリスの大規模調査が発表されました。1日約9,800歩あるく人は認知症リスクが50%低いという結果です。さらに注目されたのは、3,800歩でもすでに25%のリスク低下がみられた点です。はりきって長時間あるく必要はありません。

世界保健機関(WHO)は、65歳以上の方に週150分以上のほどよい強さの運動(早歩き、水中ウォーキング、体操など)をすすめています。1日に直すと約20分です。

ムリなく続けるコツ

おともだちやご家族といっしょに歩くと、会話による脳への刺激も加わり一石二鳥です。天気のよい日の散歩、スーパーまでの歩き、テレビを見ながらの足踏みなど、日常のなかにすこしずつとり入れてみてください。

運動は認知症予防だけでなく、血圧や血糖値の管理、転とう予防にもつながります。毎日のからだの動かし方について、くわしくはシニアの健康管理|運動・食事・すいみんの実践法もあわせてお読みください。

公園のベンチでストレッチをする高齢者
激しい運動でなくても大丈夫。ストレッチや散歩から始めましょう

2. 食事を見なおす――「色とりどりの食卓」を意識する

食事のパターンと認知症リスクの関係も研究されています。とくに注目されているのが地中海式の食事と、それをもとにしたMINDダイエット(地中海食とDASH食をかけ合わせた食事法)です。

2015年のアメリカの研究では、MINDダイエットを実践した人はアルツハイマー病のリスクが53%低いという結果でした(Morris, Alzheimer's & Dementia, 2015)。ただし注意も必要です。2023年のNEJM誌に発表されたより厳密な試験では、食事の変化だけでは認知機能に大きな差が出なかったとも報告されています。

食事だけですべてをふせげるわけではありませんが、栄養バランスのよい食事はからだ全体の健康を支える土台です。

MINDダイエットで積極的にとりたい食べもの

緑の葉野菜(ほうれん草や小松菜など)を週6回以上、ベリー類(ブルーベリーやいちご)を週2回以上、魚を週1回以上、豆類を週3回以上が目安です。ナッツ類をおやつがわりにし、油はオリーブオイルをつかいます。反対に赤身の肉やバター、お菓子、揚げものはひかえめに。

日本の食卓は「一汁三菜」の伝統があり、もともと野菜や魚がおおい食文化です。毎食の食卓にいろいろな色の食材がならぶよう意識するだけでも、よい変化が期待できます。

色とりどりの和食の食卓
野菜、魚、豆類をバランスよくとる食事が大切です

3. よいすいみんをとる――脳の「おそうじ時間」を確保する

すいみん中に脳のなかでは大切な「おそうじ」がおこなわれています。2013年にアメリカのロチェスター大学の研究チームがグリンパティックシステム(脳のリンパシステム)を発見しました。マウスの実験では、ねむっているあいだに脳の細胞のすき間が約60%広がり、脳脊髄液の流れがよくなることがわかりました(Xie, Science, 2013)。この流れによって、アルツハイマー病にかかわるアミロイドβなどの老廃物が脳の外に運び出されると考えられています。ヒトでの研究はまだ進行中ですが、すいみんが脳の「おそうじ」に重要な役割を果たすという見方が広がっています。

イギリスの長期追跡調査(ホワイトホール2研究)もこの仕組みを裏付けています。50〜60代に6時間以下のすいみんをつづけた人は、7時間ねむった人にくらべて認知症のリスクが30%高いことがわかりました(Sabia, Nature Communications, 2021)。

すいみんの「とりすぎ」にも注意

ねすぎ(9時間以上)も認知症リスクの上昇と関連があるとする研究があります。目安は毎晩7〜8時間。起きる時間と寝る時間をなるべく一定にし、規則ただしい生活リズムを心がけることが大切です。

穏やかにねむるシニア女性
すいみんは脳にとって大切な「おそうじの時間」です

4. 人とのつながりを大切にする

社会的な孤立は、認知症のリスクを高める要因のひとつです。「社会的孤立」(人との接触が客観的に少ない状態)と「孤独感」(主観的にさびしいと感じる気持ち)はちがう概念です。2022年のイギリスのバイオバンク研究(約46万人が対象)では、社会的に孤立している人は認知症のリスクが約26%高いことが報告されました(Shen, Neurology, 2022)。一方、孤独感だけでは社会的孤立を調整すると有意な関連がみられませんでした。つまり、実際に人と会う機会が少ないことが脳に影響する可能性が高いのです。ランセット委員会も「社会的孤立」を14のリスク要因のひとつに挙げています。

人との会話は脳にとってとても複雑な作業です。相手の話を聞き、理解し、自分の考えをまとめて返す――このくり返しが脳をまんべんなく使わせ、「認知予備力」(脳のもち力)をたくわえると考えられています。

地域のサロンや体操教室、趣味のサークル、ボランティア活動など、外に出て人と会う機会をつくることが大切です。電話やビデオ通話でも、顔を見て話すだけで脳への刺激になります。

こんな活動がおすすめ

地域包括支援センターでは、介護予防のための体操教室や交流サロンを無料で開いていることがあります。自治体の広報紙やウェブサイトをチェックしてみてください。はじめて参加するのは緊張するものですが、一度足をはこぶと仲間ができて、つづけやすくなります。

介護保険を使った通所サービスも、社会参加のひとつの方法です。くわしくは介護保険の使い方|申請から利用までの全手順をお読みください。

カフェで談笑するシニアの友人たち
人と会って話すことが、脳にとって一番の刺激になります

5. 耳の聞こえを大切にする――「最大のリスク要因」に気づく

ランセット委員会が特定した14のリスク要因のなかで、ひとつだけで最もおおきな割合をしめているのが中年期の難聴(8%)です。聞こえの問題は「年のせい」とかたづけられがちですが、そのままにしておくと認知症のリスクが2〜5倍に上がるとされています。

2023年にアメリカで発表されたACHIEVE試験がこの問題に光をあてました。約1,000人を対象にした大規模ランダム化比較試験です。試験全体では統計的に有意な差は出ませんでしたが、認知機能低下のリスクが高いグループ(あらかじめ設定された部分集団)では補聴器の使用が認知機能低下を3年間で48%おそくしたと報告されています(Lin, The Lancet, 2023)。研究はまだ途上ですが、聴力のケアが脳の健康にもかかわる可能性をしめした注目の成果です。

耳の聞こえが悪くなると、会話がおっくうになり人付き合いが減ります。脳は聞き取りに多くの力を使うようになり、記憶やほかの認知機能にまわすよゆうがなくなります。つまり、難聴は孤立と脳への過負荷という二重のリスクをもたらすのです。

聞こえにくさを感じたら早めに耳鼻科へ

「テレビの音量が大きいと言われる」「にぎやかな場所で会話が聞きとりにくい」などのサインがあれば、早めに耳鼻咽喉科を受診してください。補聴器は以前にくらべて小型で高性能になっており、つけていることがわからないタイプも増えています。

補聴器をつけた笑顔のシニア男性
聞こえのケアが認知症リスクを下げるという研究結果が出ています

日本の研究から――久山町研究が教えてくれること

福岡県の久山町では、1961年から60年以上にわたって住民の健康を追跡する久山町研究がつづいています。世界でもまれな長期追跡研究で、認知症の分野でも重要な発見をしてきました。

この研究では、2型糖尿病のある人はアルツハイマー病のリスクがおよそ2倍であることが報告されています(Ohara, Neurology, 2011)。また、65歳以上の認知症の有病率は1985年の6.8%から2012年には17%をこえるまで上昇しています。生活習慣病の管理がいかに大切かを数字が物語っています。

血圧や血糖値の管理は、からだの健康だけでなく脳の健康にも直結しています。定期的な健康診断をうけ、かかりつけ医に相談しながら数値を管理することが、認知症予防のたいせつな一歩です。

老後の生活設計について考えたい方は、老後のお金 2,000万円問題の実態と備え方年金はいつから・いくらもらえる?もあわせてご覧ください。

医師と高齢患者の健康相談
定期的な健診で血圧や血糖値をチェックすることも認知症予防につながります

まとめ――できることからひとつずつ

散歩道を歩くシニア夫婦の後ろ姿
小さな一歩が、未来の脳の健康をまもります

認知症は「年だからしかたない」ものではありません。世界の研究データは、日々の生活習慣を見なおすことでリスクを下げられることをしめしています。

今日からできる5つの習慣をおさらいします。

習慣 ポイント 根拠
体を動かす 1日3,800歩からでOK JAMA Neurology 2022
食事を見なおす 色とりどりの食卓を意識 MINDダイエット研究
よいすいみん 7〜8時間を規則ただしく Nature Communications 2021
人とつながる 週に1回以上、外で誰かと会う Neurology 2022(孤立で26%リスク増)
耳のケア 聞こえにくさを放置しない ACHIEVE試験(Lancet 2023)

すべてを一度に始める必要はありません。この5つのなかからひとつだけ選んで、明日から続けてみてください。小さな習慣のつみ重ねが、5年後、10年後の脳の健康をまもる力になります。

ゆとり暮らしでは、シニア世代の暮らしに役立つ情報をほかにもお届けしています。老後のお金の備え方年金の受給タイミング介護保険の申請手順日々の健康管理の実践法もぜひご覧ください。

この記事は一般的な健康情報の提供を目的としており、医療上のアドバイスに代わるものではありません。認知症の心配がある場合は、かかりつけ医にご相談ください。

参考文献

  • Livingston G, et al. "Dementia prevention, intervention, and care: 2024 report of the Lancet standing Commission." The Lancet, 2024. https://doi.org/10.1016/S0140-6736(24)01296-0
  • del Pozo Cruz B, et al. "Association of Daily Step Count and Intensity With Incident Dementia." JAMA Neurology, 2022; 79(10): 1059-1063.
  • Morris MC, et al. "MIND diet associated with reduced incidence of Alzheimer's disease." Alzheimer's & Dementia, 2015; 11(9): 1007-1014.
  • Xie L, et al. "Sleep Drives Metabolite Clearance from the Adult Brain." Science, 2013; 342(6156): 373-377.
  • Sabia S, et al. "Association of sleep duration in middle and old age with incidence of dementia." Nature Communications, 2021; 12: 2289.
  • Shen C, et al. "Associations of Social Isolation and Loneliness With Later Dementia." Neurology, 2022; 99(2): e164-e175.
  • Lin FR, et al. "Hearing intervention versus health education control to reduce cognitive decline (ACHIEVE)." The Lancet, 2023; 402(10404): 786-797.
  • Ohara T, et al. "Glucose tolerance status and risk of dementia: The Hisayama Study." Neurology, 2011; 77(12): 1126-1134.
  • WHO "Risk reduction of cognitive decline and dementia: WHO guidelines." 2019. https://www.who.int/publications/i/item/risk-reduction-of-cognitive-decline-and-dementia
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