はじめに
「年金って、けっきょくいくらもらえるの?」「くりさげたほうが得なの?」
こうした疑問をおもちの方は少なくありません。年金のしくみはむずかしく見えますが、おさえるべきポイントはそれほど多くありません。
この記事では、2026年4月時点の制度にもとづいて、老齢年金の基本を分かりやすく解説します。
- いつから年金がもらえるのか(原則65歳、くり上げ・くり下げのしくみ)
- いくらくらいもらえるのか(国民年金・厚生年金の目安)
- 手元にのこる金額はいくらか(税金・社会保険料のひかれ方)
- 年金をふやすにはどうすればいいか(付加年金・iDeCo・任意加入)
日本の年金制度のきほん
日本の公的年金は「2階だて」のしくみになっています。
1階部分:国民年金(基礎年金)
20歳から60歳までのすべての国民が加入する年金です。自営業の方、専業主婦(夫)の方、会社員・公務員の方、だれもが対象です。
- 保険料: 月額16,980円(2026年度)
- 満額受給額: 年間約81万6,000円(月額約6万8,000円)
- 受給条件: 10年以上の加入期間
2階部分:厚生年金
会社員や公務員の方が、国民年金にうわのせして入る年金です。保険料はお給料からてんびきされ、会社が半分をふたんしてくれます。
- 保険料: 給与の18.3%(本人と会社で折半)
- 受給額: 加入期間と平均給与によって異なる
- 受給条件: 厚生年金の加入期間が1ヶ月以上(+国民年金の受給資格あり)

年金はいつからもらえるのか
原則:65歳から
老齢基礎年金も老齢厚生年金も、原則として65歳からもらいはじめることができます。
ただし、もらいはじめる時期を早めたり、おくらせたりすることもできます。
繰上げ受給(60歳〜64歳)
65歳をまたずに、60歳からもらいはじめることができます。ただし、早くもらうぶんだけ年金額がへります。
- 減額率: 1ヶ月あたり0.4%の減額
- 60歳で受給開始した場合: 24%減額(0.4% × 60ヶ月)
- 一度決めたら取り消せません
60歳から繰上げると、月額は生涯にわたって減額されたままです。後から「やっぱり65歳からにしたい」と変更することはできません。慎重に判断しましょう。
たとえば、満額の月6万8,000円が受けられる方が60歳から繰上げると、月約5万1,700円に減ります。この金額が生涯続きます。
繰下げ受給(66歳〜75歳)
もらいはじめを66歳いこうにおくらせると、年金額がふえます。
- 増額率: 1ヶ月あたり0.7%の増額
- 70歳で受給開始した場合: 42%増額(0.7% × 60ヶ月)
- 75歳で受給開始した場合: 84%増額(0.7% × 120ヶ月)
月6万8,000円の方が70歳まで繰り下げると、月約9万6,600円になります。75歳まで繰り下げれば、月約12万5,100円です。
繰上げ・繰下げ、どちらが得か
「何歳まで生きるか」によって損得が変わります。
繰上げ受給の損益分岐点
60歳から繰上げ受給した場合、約80歳を超えると65歳から受給した場合の総受給額を下回ります。つまり、80歳以上長生きするなら繰上げは損になります。
繰下げ受給の損益分岐点
70歳から繰下げ受給した場合、約82歳を超えると65歳から受給した場合の総受給額を上回ります。つまり、82歳以上生きれば繰下げの方が得になります。
日本人の平均寿命(2025年時点)
- 男性: 約81歳
- 女性: 約87歳
女性の場合はくり下げ受給のメリットが出やすいといえます。ただし、これはあくまで平均であり、ひとりひとりの健康や家族の状況によって最適な判断は変わります。
「からだに不安がある」「いますぐお金が必要」ならくり上げ。「ほかに収入がある」「長生き家系」ならくり下げ。どちらか決められないときは、65歳での受給開始がもっとも無難な選択肢です。老後の家計を全体から見わたしたいときは老後のお金はいくら必要?もあわせてお読みください。
年金額の目安
国民年金のみの方(自営業など)
- 40年間満額納付: 月約6万8,000円
- 30年間納付: 月約5万1,000円
- 20年間納付: 月約3万4,000円
厚生年金加入の方(会社員など)
厚生年金の受給額は、加入期間と平均給与によって大きく変わります。あくまで目安ですが、
- 平均年収400万円・勤続35年: 月約14万円(基礎年金含む)
- 平均年収500万円・勤続38年: 月約16万円(基礎年金含む)
- 平均年収600万円・勤続40年: 月約18万円(基礎年金含む)
くわしい見こみ額は「ねんきん定期便」や「ねんきんネット」でたしかめられます。

ねんきん定期便の見方
毎年の誕生月に届く「ねんきん定期便」には、大切な情報が記載されています。
- 50歳未満の方: これまでの加入実績に基づく年金額
- 50歳以上の方: 60歳まで現在の条件で加入し続けた場合の見込額
50歳以上の方に届く金額は、かなり実態に近い見込額です。届いたら必ず確認してください。
ねんきんネットでは、繰上げ・繰下げした場合の年金額シミュレーションができます。マイナンバーカードがあれば「マイナポータル」からログイン可能です。まだ登録していない方は、最寄りの年金事務所でも手続きできます。
より詳しく知りたい方は「ねんきんネット」(日本年金機構のWebサービス)に登録すると、さまざまな条件でシミュレーションができます。

年金にかかる税金と社会保険料
年金を受けとると、そこから税金や社会保険料がひかれます。「もらえる額」と「手元にのこる額」はおなじではありません。
所得税と住民税
年金は「雑所得」にあたるため、所得税と住民税がかかります。ただし、65歳以上の方は「公的年金等控除」が適用されるため、年金収入が年間158万円(月あたりおよそ13万2,000円)以下であれば所得税はかかりません。
年金にかかる所得税は、日本年金機構があらかじめ源泉ちょうしゅうしてくれます。ただし、年金以外にも収入がある方は確定申告が必要になることがあります。
年金の収入が年400万円以下で、ほかの所得が年20万円以下であれば、原則として確定申告は不要です。ただし住民税の申告が必要になる場合があるため、おすまいの市区町村にたずねてみてください。
社会保険料
年金からは国民健康保険料(または後期高齢者医療保険料)と介護保険料もひかれます。金額は年金額や自治体によってことなります。
たとえば年金が月15万円の場合、税金と社会保険料をあわせて月1万5,000〜2万円ほどひかれるのが一般的です。手取りはおよそ13万〜13万5,000円になります。
介護保険のしくみについてくわしく知りたい方は、あわせてお読みください。
年金をふやす方法
任意加入(60〜65歳)
国民年金に入っていた期間が40年に満たない方は、60歳から65歳までのあいだ、みずから保険料をおさめて加入期間をのばすことができます。シニアの健康管理とあわせて、からだもお金も元気なうちにそなえておくのがおすすめです。
付加年金
国民年金の保険料に月400円を上乗せして納めると、将来の年金に「200円×納付月数」が加算されます。2年で元が取れる非常にお得な制度ですが、意外と知られていません。
月400円を10年間(120ヶ月)納めた場合、追加の保険料は合計48,000円。一方、受け取る年金は年間24,000円(200円×120ヶ月)増えるため、わずか2年で元が取れます。国民年金加入者なら検討の価値が大きい制度です。
iDeCo(個人型確定拠出年金)
自分でお金を出して運用する、いわば「じぶん年金」です。かけ金がすべて所得控除になるため、節税のメリットもあります。ただし原則として60歳まで引き出せないため、あくまでも老後のそなえとして活用するのが前提です。
かけ金の上限は働き方によってことなり、自営業の方は月6万8,000円まで、会社員の方は月1万2,000〜2万3,000円が目安です。まだ加入していない方は、お取り引きのある金融機関や老後の資金計画のなかでもくわしくふれています。
年金のうけとり手続き
年金は65歳になると自動的にふりこまれるわけではありません。じぶんで「年金請求書」をていしゅつする必要があります。
65歳の誕生日の3か月ほど前に、日本年金機構から「年金請求書」が届きます。届いたら必要事項を記入し、戸籍とうほんや通帳のコピーとあわせて、もよりの年金事務所か市区町村の窓口にていしゅつしましょう。手続きから1〜2か月ほどで、「年金証書」と「年金決定通知書」が届き、はじめての年金がふりこまれます。
請求書をていしゅつしないと、年金は支払われません。届いたらはやめに手続きしましょう。なお、受けとる権利は5年でじこう(時効)となるため、5年をすぎた分は受けとれなくなります。
まとめ——自分の年金を「見える化」しよう
年金は老後のくらしを支えるもっとも大きな収入のひとつです。制度がむずかしそうに感じても、おさえるべきことは3つだけです。
- ねんきん定期便をさがして確認する — 見あたらなければ「ねんきんネット」に登録しましょう
- くり上げ・くり下げのシミュレーションをやってみる — ねんきんネットで無料で試せます
- 年金事務所に一度そうだんしてみる — 電話でも対面でも予約でき、相談は無料です
わからないことがあれば、もよりの年金事務所でいつでも無料相談ができます。電話での予約もできますので、きがるにたずねてみてください。
お問い合わせ先: 日本年金機構 ねんきんダイヤル 0570-05-1165
老後のくらしは年金だけでなく、家計全体の見とおしが大切です。老後のお金はいくら必要?で生活費全体の準備についてもご確認ください。からだの健康という土台をまもるためにシニアの健康管理や認知症をよぼうする5つの習慣もあわせてお読みいただけます。
※この記事は2026年4月時点の制度にもとづいています。制度はかいせいされることがありますので、最新情報は日本年金機構のWebサイトでご確認ください。


