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シニアの健康管理|運動・食事・睡眠の実践法

16分で読めますゆとり暮らし編集部
彩り豊かな野菜と果物が並んだ健康的な食卓
この記事の要点
  • 60代から始める健康管理の4つの柱——運動・食事・睡眠・社会参加を具体的に解説します。WHOの運動推奨量、タンパク質の目安量、良い睡眠のための7つの習慣、孤立を防ぐ社会参加の方法まで。海外の最新研究と日本の制度情報を織り交ぜた実践ガイドです。
この記事では公的制度に関する情報を含みます。制度の内容は記事執筆時点のものです。最新情報は各窓口または公式サイトでご確認ください。

「健康寿命」を延ばすための4つの柱

日本人の平均寿命は男性81歳、女性87歳を超えていますが、「健康寿命」——日常生活を自立して送れる期間——はそれより約10年短いのが現状です。この差を縮めるために、60代からの健康管理がとても重要になります。

健康を維持するために押さえたいのは、運動・食事・睡眠・社会参加の4つの柱です。どれも特別な道具やお金は必要ありません。日々の暮らしの中で少しずつ取り入れていけるものばかりです。

スタンフォード大学が2026年1月に発表した研究でも、60代・70代の生活習慣の見直しが、その後の健康状態に大きく影響することが報告されています。この記事では、海外の最新の研究データもまじえながら、具体的な実践法をご紹介します。

この記事の対象

60歳以上の方で、とくに大きな持病がなく日常生活を自立して送れている方を想定しています。治療中の病気がある方は、新しい運動や食事法を始める前に必ずかかりつけ医にご相談ください。

朝の散歩を楽しむシニア夫婦
無理なく続けられる運動習慣が健康寿命を延ばすカギ

第1の柱:運動——「週150分」を目標に

なぜ運動が大切なのか

世界保健機関(WHO)は、65歳以上の成人に対して週150分以上の中等度の有酸素運動を推奨しています。これは1日あたり約20〜30分の運動に相当します。

定期的な運動は筋力の低下をふせぐだけでなく、転倒リスクのけいげん、血圧や血糖値のかいぜん、認知機能のいじにも効果があることがおおくの研究で示されています。

無理なく始める3つの運動

ウォーキングはもっとも手軽で効果的な運動です。朝の涼しい時間帯に20〜30分歩くことから始めてみましょう。万歩計やスマートフォンのアプリで歩数を記録すると、モチベーションが続きやすくなります。

筋力トレーニングも週2回は取り入れたいところです。重いダンベルを持つ必要はありません。椅子からの立ち上がり運動(スクワット代わり)、壁に手をついた腕立て伏せ、つま先立ちなど、自分の体重を使った運動で十分な効果が期待できます。

バランス運動は転倒予防に直結します。片足立ち(壁や椅子に手を添えてOK)を1日10秒×左右3セットから始めましょう。太極拳やヨガも、バランス能力の向上に有効とされています。

運動を続けるコツ

米国国立老化研究所(NIA)は、運動を習慣化するためのポイントとして「好きな活動を選ぶこと」「誰かと一緒にやること」「日課に組み込むこと」を挙げています。例えば、毎朝のゴミ出しのついでに近所を一周する、お友達と週2回公園を歩くなど、生活の流れの中に自然と組み込む工夫が有効です。

自宅で椅子を使った運動をするシニア女性
椅子を使った運動なら自宅で無理なく筋力を維持できる

運動時の注意点

体調がすぐれない日は無理をしないことが大切です。急に激しい運動を始めると、関節や心臓に負担がかかる場合があります。「ややきつい」と感じる程度——会話がなんとかできるくらいの強度——が適切な目安です。

夏場は熱中症たいさくとして、すずしい時間帯をえらび、こまめな水分ほきゅうをこころがけてください。帽子や日傘をつかい、あつい日は屋内での運動にきりかえるのもかしこい判断です。冬場はからだがひえた状態での運動はさけ、室内でかるいストレッチをしてから外出しましょう。路面の凍結にもじゅうぶん注意してください。

運動中にめまい・胸のいたみ・つよい息切れを感じたら、すぐに運動をやめて休みましょう。症状がおさまらない場合はかかりつけ医を受診してください。

第2の柱:食事——量より質を意識する

タンパク質を意識して摂る

年齢を重ねると、同じ量の食事からでも筋肉を作る効率が低下します。欧州臨床栄養代謝学会(ESPEN)のガイドラインでは、健康なシニア世代には体重1kgあたり1.0〜1.2gのタンパク質が推奨されています。体重60kgの方なら、1日60〜72gが目安になります。

朝食にゆで卵1個(約7gのタンパク質)、昼食に焼き魚(約20g)、夕食に豆腐半丁(約10g)と鶏むね肉100g(約22g)。これに牛乳1杯(約7g)を加えれば、1日の目標に近づけます。

毎食にタンパク質をふくむ食品を1品は入れる、というかんたんな意識をもつだけで食事の内容はおおきく改善します。

地中海食を参考にする

認知症予防や心血管疾患のリスク軽減に効果があるとして、世界的に注目されているのが「地中海食」と呼ばれる食事パターンです。

地中海食の基本は、野菜・果物・全粒穀物を豊富にとり、良質な脂質(オリーブオイル・ナッツ類)を使い、魚を週2回以上食べ、赤身肉や加工食品を控えめにするというものです。

日本の食文化にも通じる部分がおおくあります。魚を中心にした和食をベースに、オリーブオイルをすこし取り入れるだけでも、地中海食のめぐみを受けやすくなります。

たとえば、あさの納豆ごはんに小さじ1のオリーブオイルをたらす。おひるの焼き魚にレモンをしぼる。おやつにくるみやアーモンドをひとつかみ。こうした小さな工夫で、ふだんの和食が地中海食に近づきます。

ビタミンDとカルシウムで骨をまもる

60代以降はとくに骨密度がさがりやすく、転倒による骨折のリスクがたかまります。カルシウムは牛乳・ヨーグルト・小魚・豆腐からとれますが、それだけでは不十分です。カルシウムの吸収をたすけるビタミンDも一緒にとる必要があります。

ビタミンDは日光をあびることでからだの中でつくられます。1日15〜20分ほど屋外で日光にあたるだけで十分です。食べ物では、さけ・さば・しいたけ(日光にあてたもの)にビタミンDがおおくふくまれています。冬場や外出がむずかしい方は、かかりつけ医にサプリメントのそうだんをしてみてください。

減塩は少しずつ

厚生労働省は1日の食塩摂取目標を男性7.5g未満、女性6.5g未満としています。急に味付けを薄くすると食事がおいしくなくなり、食欲低下につながるおそれがあります。出汁をしっかりきかせる、レモンやお酢で風味をつけるなど、旨みで補う工夫をしながら段階的に減らしていきましょう。

キッチンで健康的な朝食を準備するシニア男性
毎食にタンパク質を1品入れる意識が食事改善の第一歩

水分補給を忘れずに

加齢とともに喉の渇きを感じにくくなります。「のどがかわいたら飲む」では遅い場合があるため、1日6〜8杯(およそ1.2〜1.6リットル)の水分を目安に、時間をきめてこまめに飲むくせをつけましょう。

フレイルを防ぐために

「フレイル」とは、加齢にともなって心とからだの活力がおとろえた状態のことです。フレイルになると、ささいなきっかけで介護が必要になるリスクが高まります。

フレイルをふせぐカギは「食べること」と「動くこと」の両立です。とくにシニア世代はやせすぎに注意が必要です。BMI(体格指数)が20を下まわると低栄養のリスクがたかまります。体重60kgで身長160cmの方のBMIは約23.4で、これは理想的な範囲です。定期的に体重をはかり、1か月で2kg以上へった場合はかかりつけ医にそうだんしてください。

英国のAge UKがまとめた報告でも、バランスのよい食事と週2〜3回の軽い筋トレをくみあわせることで、フレイルの進行をおくらせたり、改善できるケースがあることが示されています。

介護保険のしくみを前もって知っておくことも、いざというときの安心につながります。

第3の柱:睡眠——脳のメンテナンス時間

睡眠と脳の関係

睡眠中、脳内では「グリンパティック系」と呼ばれる仕組みが働き、日中にたまった老廃物(アミロイドβなど)が洗い流されます。このクリーニング機能は深い睡眠時にもっとも活発に働くため、質の良い睡眠は認知症予防にも直結します。

穏やかに眠るシニア女性
質の良い睡眠は脳のメンテナンスに欠かせない

良い睡眠のための7つの習慣

毎日同じ時刻に起床・就寝することが、体内時計を安定させるもっとも効果的な方法です。朝起きたら太陽の光を浴びましょう。これにより体内時計がリセットされ、夜の入眠がスムーズになります。

昼寝をする場合は30分以内に留めましょう。長い昼寝は夜の睡眠の質を下げる原因になります。午後3時以降の昼寝は特に避けてください。

カフェインは午後2時までに。コーヒーや緑茶に含まれるカフェインの体内での半減期は個人差がありますが、5〜7時間ほどかかります。

寝室の環境も大切です。室温は18〜22℃、照明は暗めに。テレビやスマートフォンのブルーライトは入眠を妨げるため、就寝1時間前にはやめましょう。

入浴は就寝の1〜2時間前がベストタイミングです。体温が上がった後に下がる過程で眠気が促されます。

寝酒は逆効果です。アルコールは入眠を早める一方、睡眠の後半の質を著しく下げることが分かっています。

眠れない夜がつづく場合は、かかりつけ医にそうだんしてください。無理にふとんの中にいると、かえって不眠が悪化することがあります。20分たっても眠れないときは、いったん寝室をはなれて、暗めの部屋で静かにすごしてから、ねむくなったらもう一度ふとんに入るほうが効果的です。

デンマークの「アクティブ・エイジング」から学ぶ

北欧の中でもデンマークは、高齢者の自立と社会参加を重視する「アクティブ・エイジング」政策で知られています。コペンハーゲン大学の健康老化研究センターの長期研究では、筋力トレーニングを日常に無理なく組み込むことで、筋肉量の維持だけでなく精神的な充実感も高まることが報告されています。特別な施設は不要で、自宅での簡単な筋トレでも効果があるという点は、日本のシニアにとっても参考になります。

見おとしがちな口腔ケア

歯と口の健康は、からだ全体の健康にふかくつながっています。歯周病は糖尿病を悪化させるだけでなく、心血管疾患や誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)のリスクをたかめることがわかっています。

毎日のケアのポイント

歯みがきは朝と夜の2回。歯ブラシだけでなく、歯間ブラシやフロスもつかうと、みがきのこしが大きくへります。電動歯ブラシは手先の動きにふあんのある方にもおすすめです。

入れ歯をおつかいの方は、毎日はずしてあらい、専用の洗浄剤で清潔をたもちましょう。あわない入れ歯をがまんして使いつづけると、食事がおっくうになり低栄養をまねくことがあります。

歯科検診のすすめ

歯のトラブルは自分では気づきにくいものです。半年に1回は歯科検診をうけましょう。自治体によっては高齢者むけの歯科検診を無料で実施しているところもあります。

8020運動をご存じですか

「80歳で20本以上の歯をのこそう」という目標をかかげた運動です。自分の歯でかめることは、おいしく食べるだけでなく、脳への刺激にもなり、認知症の予防にもつながるとされています。

第4の柱:社会参加——孤立を防ぐ

孤立が健康に与える影響

米国の研究では、社会的な孤立は1日15本の喫煙に匹敵する健康リスクがあると報告されています。孤立はうつ病、心血管疾患、認知症のリスクを高めることが多くの研究で一貫して示されています。

退職後や配偶者との死別など、ライフステージの変化によって社会とのつながりが薄れやすいシニア世代だからこそ、意識的に人と関わる機会をつくることが大切です。

地域の集いで体操をするシニアたち
地域の体操教室やサロンは社会参加の第一歩

地域とつながる方法

自治体の広報紙やホームページで、地域のサロン・体操教室・趣味講座の情報をチェックしてみましょう。多くの自治体が高齢者向けの無料または低額の活動プログラムを提供しています。

ボランティア活動も社会参加のひとつです。人の役に立つという実感は、精神的なじゅうじつ感につながります。地域の子ども食堂のお手伝い、公園の清掃活動、図書館での読みきかせなど、体力にあわせて無理なく参加できるものをえらんでみてください。

趣味をとおしたつながり

趣味の活動は、楽しみながら社会参加ができる一石二鳥の方法です。各地の公民館や市民センターでは、絵手紙・書道・コーラス・ダンスなど、さまざまなサークル活動がひらかれています。参加費は月数百円〜千円ていどのものがおおく、気がるに始められます。

自治体のシルバー人材センターに登録すれば、庭の手入れや家事代行など、これまでの経験やとくぎを活かしたしごとを通じて社会とつながることもできます。わずかな収入にもなるため、老後の家計の足しにもなります。

デジタルのつながりも活用

遠方に住む家族や友人とのビデオ通話も、立派な社会参加です。LINEのビデオ通話やZoomなど、画面越しでも顔を見て話すことで、電話以上のつながりを感じられます。操作が不安な場合は、地域の「スマホ教室」に参加してみるのもおすすめです。

こころの健康にも目をむけて

退職や配偶者との死別、からだの不調などをきっかけに、気もちがふさぎこむことはめずらしくありません。2週間以上にわたって「何もやる気がおきない」「よく眠れない」「食欲がない」という状態がつづく場合は、うつ病のサインかもしれません。

がまんせずに、かかりつけ医や地域包括支援センターにそうだんしてください。地域包括支援センターは各自治体に設置されており、健康・介護・くらしのことを幅広くそうだんできる窓口です。

老後のお金の不安がこころの負担になっているケースも少なくありません。年金の基礎知識老後の資金計画を前もってととのえておくと、きもちのゆとりにつながります。

健康管理を「見える化」する

健康状態を数字で「見える化」することも、ながく元気でいるための大切なポイントです。からだの変化に早くきづければ、それだけ早く対応ができます。

体重と血圧は毎日決まった時間に測り、記録をつけましょう。手帳に書く方法でも、スマホアプリを使う方法でも構いません。数字の変化に気づけることが大切です。

定期健診は年に1回必ず受けましょう。自治体が実施する特定健診は無料または低額で受けられます。がん検診も忘れずに。早期発見・早期対応が大切です。

お薬手帳は複数の医療機関にかかっている場合にとくに重要です。くすりの重複やのみあわせの問題をふせぐために、受診時には毎回持参してください。

予防接種もわすれずに

65歳以上の方がうけておきたい予防接種はおもに3つあります。インフルエンザワクチン(毎年秋ごろ)、肺炎球菌ワクチン(65歳で1回)、帯状疱疹(たいじょうほうしん)ワクチンです。いずれも自治体のじょせい(助成)をうけられることがおおいため、おすまいの市区町村にといあわせてみてください。

健康診断を活用しよう

米国予防医学会(USPSTF)の推奨では、65歳以上は血圧・コレステロール・骨密度・大腸がんなどの定期検診が特に重要とされています。日本でも自治体の特定健診やがん検診は無料〜低額で受けられます。年に1回は必ず受診し、結果を経年で比較する習慣をつけましょう。

まとめ——きょうからひとつ始めてみましょう

健康管理ときくと大変そうに感じるかもしれません。でも、すべてを一度にかえる必要はありません。

朝の散歩を10分から始める。毎食にタンパク質を1品くわえる。寝るまえのスマホを30分はやくやめる。週に1回、友人に電話をかける。歯間ブラシをつかってみる。

こうした小さなつみかさねが、5年後・10年後の健康を大きく左右します。

まず1つだけえらんでみてください
  • あさの散歩(10分でOK)
  • 毎食にタンパク質を1品くわえる
  • 週1回、友人や家族と話す(電話・ビデオ通話)
  • 体重と血圧の記録をつける

ひとつでも「これならできそう」とおもったら、きょうから始めてみましょう。

食事面で認知症よぼうにとくかした情報をお探しの方は、認知症を予防する5つの習慣もあわせてご覧ください。老後のお金のそなえについては年金のきほん老後の資金計画もお役に立ちます。元気なうちに身のまわりの準備をしておきたい方は終活チェックリストもご参考ください。


この記事は一般的な健康情報を提供するものであり、医師の診断や治療に代わるものではありません。具体的な症状や心配がある場合は、必ずかかりつけ医にご相談ください。

参考文献

海外の研究・ガイドライン

国内の資料

  • 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2020年版)」
  • 厚生労働省「健康日本21(第三次)」
  • 日本老年医学会「フレイル診療ガイド2018年版」
  • 健康管理
  • シニアの健康
  • 運動
  • 食事
  • 睡眠
  • 介護予防
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